発露。
日々感じたことをありのままに。
気ままに送る日記的不定形メモ。
漫画について語ったり萌を語ったり。
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期間にしたら短いのに
君と一緒に過ごした時間はこんなにも長い。
「よぉ」
「宍戸さん」
夏が過ぎて秋が来た。
そして俺達の熱い夏も終わった。
あんなにも長かったのに今ではあっという間に終わってしまった気がする。
こいつと今みたいに親しくなったのもそんなに前じゃないのが嘘みたいだ。
今ではこいつのほとんどを知ってる。
優しさ、笑顔、涙だって見た。
「なに、考えてるんです?」
あげた視線の先に笑顔。
「寂しそうな顔してる」
眉をちょっと下げて困る顔が大型犬みたいだ。
「そんな顔してたか~?」
笑いながら俺より大分上にある長太郎の頭を乱暴に撫でた。
わりと硬い髪が手をくすぐる。
「もー!宍戸さんはすぐそうやって~」
何がおかしいわけでもないのに自然と互いに笑いがこぼれた。
こうやって一緒に何気ない会話をしたりするのも久しぶりだった。
大会に出て試合をしていたのは昨日のようでまるで遠い。
「もう秋なんですね」
「あぁ」
言葉はそれしか出てこなくて、沈黙。
放課後のコートももう静かだった。
部室から漏れる光が目に入る。
きっとそこには部長としての日吉がいるんだろう。
もう、あそこもここも俺達の場所じゃない。
「いいんですか?こんなとこでのんびりしてて」
「いーんだよ」
上体を倒して空を見るともう薄暗い闇があった。
「なんか実感わかねぇな」
「そうですか?俺は寂しいです。部活に3年生が来ないの。すごく実感してる」
「あー、そっか。
早かったな。今年も夏は」
「そう、ですね」
ネットの片付けられたコートに目をやり長太郎が続ける。
「あなたとこんなに親しくなるなんて思ってもいなかったですよ」
「そうだな。俺はシングルスだったしな」
そうだ。
あのとき、あの試合がなかったら今とは違っていたかもしれない。
「宍戸さんと組んで親しくなったのがちょっと前だなんて信じられないな」
考えた矢先に同じような言葉が長太郎の口からこぼれてわずかながらも驚いた。
「だな」
短く一言返した後再び訪れた沈黙に身を任せて目を閉じる。
「素敵な時間でした」
呟く声は小さかった。
「俺はこの夏をずっと忘れない」
目を閉じたまま、うん、と相槌をうつ。
きっと過ごしていく時間なんて、量じゃなくて密度なんだと思う。
だってこんなにも
君との時間は長い。
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